2012年4月24日火曜日

胃内のボタン電池誤飲の対応

こどもはいろんなものを飲み込んでしまうが、代表的なもののうちの1つがボタン電池。
たとえばこんなものを飲み込んでしまいます。
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実際にレントゲンでとると、右のような感じになります。
翌日にレントゲンで確認すると
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と腸まで動いています。
530254_15900bzz00580000_a_00_04_fi 多くの小児科の本には、「ボタン電池は胃を穿孔させる危険性があるから必ずすぐに取り出す」と書かれています。学生向けの教科書には今までは必ずそう書いてありました。
具体的な方法は、胃の中に、先に磁石がついたチューブを入れて、電池をその磁石にくっつけて取り出します。マグネットカテーテルを使って取るの は、口からチューブを入れ、すぐに終わるわけではなく、かなり時間がかかることが多く、非常につらいからです。しかし、今ではその苦痛が意味がある苦痛だとは、思えないのです。
実は、4年前までは”胃の中にあるボタン電池は、なにがなんでも絶対に取らなければならない”とそう信じ込んでいました。ある時、レントゲンで胃 の中にあるのを確認すると、そのまま帰宅させ、翌日レントゲンを撮って確認するという方法をとっている人たちがいることを知りました。救急関係の先生方で す。
そこで、気になったため、調べてました。アメリカで15年前ほどに「Ingestion of cylindrical and button batteries: an analysis of 2382 cases.」という2382例のボタン電池誤飲を検討した結果から、食道にあれば、急いで摘出しなければならないが、胃より先に行っていれば、多くは経 過観察でよいとなっているのです。しかも、本文の中に「ある一部の国ではすべての飲み込んだ電池は、一律に摘出することになっている。日本のような」と、 我が国の適応に対して、特殊な対応であると記載されています。
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今では、私個人は胃の中にあれば、原則そのまま様子をみることにしました。
時々、マグネットチューブで電池の摘除を試みてもうまくいかないことも多く、うまくいかなかったとき、内視鏡を試みず、経過観察にしているケース を散見します。それなら、最初から様子を見てもよいのではと今では思っています。さらに、胃から、電池を引き上げるということは、胃という安全域??と思 われているところから、明らかに危険域である食道に近づけてしまう、もし、ボタン電池を食道で落としてしまったら、それこそ大変だからです。
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「食道に落ちてしまったら、内視鏡でとればよい」という考え方もあるでしょう。確かに、上記のアメリカの報告では、食道にある場合は90%内視鏡で 摘出できるとなっています。でも、逆に言うと10%は手術となってしまう危険性があると言うことです。あと、この表からは胃の中にある場合、内視鏡でも 50%程度しか摘出できないとなっていて、内視鏡よりも摘出率が悪いマグネットカテーテルを使うのは、どうかなと今では思っています。
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ちなみに日本中毒センターでは、以下のような対応を薦めています。
医療機関での処置
1)X 線による電池の位置の確認
2)食道内にあれば、バルーンカテーテルや磁石つきカテーテル、内視鏡を用いて摘出を試みる
3)胃内にあれば、磁石で摘出を試みてもよい
4)胃内または腸管内にある場合は、通常の食事をとらせ、下剤を投与して自然排出を促す排出まで24 時間ごとにX 線検査と観便、全身状態と腹部症状をチェック
5)強い腹痛や腹膜炎症状が発現すれば外科的処置
6)1カ所に8 時間以上停滞した場合には、入院させて経過を観察し、外科的処置も考慮
で、経過観察するとどうなるかは以下のように記載されています。
報 告されている国内外の電池誤飲事故の経過をみると、252 例では、21 例にのみ嘔吐、胸痛、咳、腹痛、下痢、黒色便、発疹などの症状が発現しているが、その他215 例は自然排出している(国外例では72 時間以内に85.4%が排出、国内例では56 時間以内に100%が排出)
つまり、私は胃の中のボタン電池に対しては、様子を見て翌日にレントゲンを撮り直すことと、プリンペランなどの胃の動きを促進させる薬を処方することにしています。
ただ、胃の中にあるものを摘出してはいけないというわけではないです。私は食道にボタン電池が長期に潰瘍を起こすようなケースがあるので、食道に近づけない方がいいなと個人的に思っています。

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